寒い冬の冷えた身体でお風呂にドブン、びりびりとした刺激とともにじ〜んと温まっていくのが極楽気分という人は多いですね。ところがそこには大きな落とし穴があることに気付いていないと、ほんとうにそのまま極楽までサヨウナラしかねない危険が潜んでいます。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化が身体に及ぼす衝撃のことで、血圧の急変動、脈拍数の急増などの症状を引き起こします。高齢者や高血圧の人にとっては、心筋梗塞や脳血管障害などにつながり、命取りになりかねません。ヒートショックのメカニズムは入浴行動に伴う血圧の変化と密接に関連しています。
- 寒い脱衣場や浴室に入り、脱衣や身体を洗うなど身体を動かすと血圧は急激に上昇します
- 浴槽に入る時には熱い湯に触れ、さらに静水圧の影響で心臓の負担が大きくなり、血圧は上昇します。
しかし、湯につかっていると温熱効果で血流がよくなり、血圧は急激に下降します。 - 温まった身体で寒い脱衣室に戻り、着衣行動で体を動かすことによって血圧は上昇します。その後、服を着て体温は保たれるため、血圧は下降し、そのまま長時間持続します。いずれの行動においても、浴室温度が低く居室や湯温との温度差が大きいほど、ヒートショックが起こりやすくなります
熱〜いお湯が大問題
夏と冬のお湯の温度を比較すると、夏が平均38℃、冬は平均42.3℃で、42℃以上の熱いお湯に入る人が6割以上です。また、入浴時間の平均は夏が20分、冬が25.7分ですから、冬は「熱いお湯に長くつかる人」が多いことがわかります。さらに、夏と冬の脱衣室・浴室とお湯との温度差を比較すると、夏は約13℃なのに対し、冬は約32℃もあり、夏の2.5倍もの温度差があります。冬は浴室が寒いだけでも身体に負担がかかるのに、浴室とお湯との温度差が大きいため、ますます負担が増える結果となっています。
浴室の寒さ解消のためにはどうしたらいいの?
ヒートショックを防ぐためには、湯温は低めに(41℃以下)、居室と浴室および浴室とお湯の温度差を少なくすることが必要です。このためには、浴室を暖める必要があります。 浴室の寒さ解消のためには、大半の人が入浴前にお湯を流す、浴槽のフタをとって湯気を立てる、浴室の床にマット・すのこ等を敷くなどの対策を講じているようです。 また、最近では天井から温風を吹き出し、脱衣室と浴室を同時に温める温風暖房や壁埋込式温風暖房、湿気も取り除く浴室暖房乾燥機、脱衣室用壁掛けヒーターなど、いろいろな暖房設備も開発されています。
すぐできるお風呂でのヒートショック防止の工夫
シャワー給湯がおすすめ
風呂の蓋を開けたまま給湯・湯沸かしすると、浴室内が温まり、同時に湯温を下げることができます。但し、お湯と空気が接触する面積が一定なため、短時間で浴室温度を上昇させるには限度があります。そこで、おすすめなのがシャワー給湯。フックを取り付けるなどして、なるべく高い位置から給湯すれば、お湯と空気の接触面積が広がり、効果的に浴室温度を上昇させることができます。実験によると、シャワー給湯により浴室温度は15分間で約10℃上昇させることができます。
高齢者は二番湯に入る
「年寄りにさら湯はいけない」とは昔から言われてきました。家族が入浴した直後に二番湯に入れば、温まった浴室で低い湯温で入浴できることから、高齢者の入浴事故を防ぐための生活の知恵とも言えそうです。ちなみに、現代のお風呂で他の家族が入浴した直後に入浴すると、20℃程度の浴室温度で入浴することができます。
半身浴も効果的
半身浴は38〜39℃のぬるめのお湯にみぞおちの下までつかり、20〜30分間、うっすら汗ばんでくるまでじっくり温まる入浴方法です。心臓や肺を水圧の負担から守るので、高血圧の人、高齢者、心臓や肺機能が弱い人に向いています。さらに、低めの湯温により副交換神経が優位に働き、心身をリラックスさせ、疲労や不眠の解消、冷え性、足のむくみ、腰痛にも効果的です。上半身がお湯から出ているため、肩にタオルをかけたり浴室の温度を暖かく保つこと、白湯を飲むなどの水分補給を心がけるなども忘れずに!!