近年、環境による影響や生活様式の変化に伴い、アレルギー性疾患の増加が社会的な問題になっています。 その中でも、多く見られるのが「気管支喘息」です。 治療ガイドラインの普及などにより、死亡率は以前より減少しましたが、今なお、年間約4,000人もの方が亡くなっています。 もし気管支喘息となっても健やかな毎日をおくるためには、病気を正しく理解し、適切な治療を受けることが大切です。
どんな病気
気管支喘息(喘息)は発作性に始まる咳、息を吐くときの喘鳴、呼吸困難を繰り返して起こす病気です。気管支のまわりにある平滑筋がけいれんを起こし、収縮します。また、気管支の粘膜は水を含むように腫れ、さらにその粘膜からの分泌物が増加し、気管支の中の空気の通る道は狭い状態になっています。このように、狭くなった気管支を空気が通るためにゼーゼーヒューヒューという音が聞こえるわけです。 このような喘息の発作は、繰り返して起こすことが特徴です。小児の場合、発作が始まると、1回の発作は1日から4日ほど続きます。このような発作を起こしやすいシーズンになると、毎週のように繰り返します。中等症以上の喘息に限ってみると、年間で平均20回前後の発作を起こすことがわかっています。
発作は夜起きやすい
日が暮れて暗くなってから、朝、日が昇るまでの間、すなわち夜間起きるのが大部分です。
ある調査によると、93%ぐらいの発作がこの間に起こっています。これに対し、昼間発作が起きることはそれ程多くありません。
発作が夜に起こりやすい理由
- 自律神経の問題
夜になると、自律神経のうちの副交感神経が緊張します。副交感神経の緊張しやすい状態というのは、気管支が収縮しやすく、発作の起きやすい状態になるわけです。 - 抗原の問題
小児の喘息の大部分はアレルギー性であり、具体的な原因としては家のほこりの中のダニが関係しています。このダニは身の回り、たとえば枕の中、あるいはじゅうたん、ふとんなどに含まれていますし、また日中は上の方に舞い上がっているわけですが、夜寝て静かになると枕やじゅうたんのダニを吸入することになります。布団の上で走り回ってダニを飛ばすこともあります。枕を投げることもあります。そうして浮遊しているダニが落下してきて、それを吸い込むということにもなります。またベッドが原因の場合には、夜になって猫や犬が側に寄ってきてそれが原因で発作が起こるということもあるかと思います。 - 明け方の冷え込み
気管支は気温が急激に低下すると収縮しやすく、ひいては発作を起こしやすくなります。夜寝た時間に比べて明け方は平均的にいって5度〜6度温度が下がるといわれています。特に朝4時から5時にかけて急激に気温が低下し、それが原因で発作が起こるということになります。気管支もこの時間帯が一番細くなるという報告があります。 - 気管支の中の分泌物
大人は1日に200ccぐらいの分泌物を気管支から出しますが、昼間はそれを飲んだり吐き出したりします。しかし、夜間は寝ているためにこれが気管支の中にたまり、ある程度以上になると気管支を刺激して咳を起こし、発作になるといわれています。
症状の現れ方
発作性の咳(せき)、喘鳴(ぜんめい)と呼吸困難が起こり、ごく軽度のものから死に至るものまであります。喘鳴と呼ばれる「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音がのどや胸で聞こえる特徴がありますが、軽症の場合は必ずしも聞こえるわけではありません。 呼吸困難は、日によって、あるいは時間によって変化することが特徴で、自然に、あるいは治療により改善します。喘鳴や咳は、冷房の部屋に入った時や、煙、香水などの刺激に対して非常に敏感に反応して、誘発されやすい特徴があります。また、飲酒によって喘息が悪化する症例が日本人には約半数あるので、 喘息の患者さんは飲酒には注意しなくてはなりません。喘息の発作は、多くの場合、夜中から朝方にかけて、咳、喘鳴で始まります。また、運動により誘発されることもあります。外出時の慌(あわ)ただしい時や、バスに乗り遅れまいとバス停に急ぐ時などにしばしば症状が強くなります。 小児の場合では、布団で遊んでいる時に、布団のなかのハウスダストが飛散して発作が誘発されることもしばしばあります。アスピリン喘息とは、アスピリンなどのかぜ薬・痛み止めの内服、座薬、注射のあと20〜30分たって急激な発作が誘発される喘息です。 喘息の患者さんの10人に1人の割合でみられますが、このような経験がある人は、病院あるいは歯科医院の受診時には必ず報告することにしましょう。
病気に気づいたら
喘息は、ごく軽い症例でも、刺激が強い場合は重症化することがあります。
「喘息ではないかな?」と思ったら専門医の診察を受けて、肺機能などの客観的なデータに基づいて、病状を評価してもらう必要があります。
その時に、症状に応じた治療を受けてください。
ごく軽い症例でも、短時間作用性のβ2刺激薬吸入剤を携帯していると安心です。また、喘息の症状は改善と悪化を繰り返す特徴があることから、改善しても必ず、薬を携帯しておくことを心がけてください。